ITスキル標準は経済産業省が定めた「情報サービスの提供に必要な実務能力を明確化、体系化した指標」です。
2002年に最初のものが公表され、その後改訂が続き、2012年3月公開の「ITスキル標準 V3 2011」が一応の区切りとなっています。
制定の背景には、情報化の進展に伴い、高度な人材の育成の必要性が認識され、企業にとってはスキルの評価や調達方針を明確化できる具体的な指標を、個人にとってはキャリアパスで身につけるスキルの明確化を提供しようという目的がありました。
「標準」にはそもそ、性格上、堅苦しさがあり、とっつきにくいものですが、スキル標準は企業の実務やプロフェッショナルのスキルアップに利用されることを目指しており、なかなかよく考えられています。皆さんが今後、キャリアパスを考えていく上で参考になると思います。
ITスキル標準の主要部分はキャリアフレームワークとスキルディクショナリという2つの文書で示すことができます。
上図がキャリアフレームワークです。横軸に11職種、35の専門分野、縦軸に7つの能力レベルを示します。この表はビジネスで要求される成果の指標(達成度指標)により、これを達成するプロフェッショナルの実務能力を示すものとしています。
上図は能力レベルとその評価方法の概要を示します。レベル1から3は、1人で仕事をする能力で、レベル3で初めて独力で仕事をできる技術者となります。レベル4以降は技術チームをリーダーとして指導・管理した経験があることが必須になります。
レベル5は社内で認知されるレベル、レベル6は業界で認知されるレベル、レベル7は業界トップレベルという位置づけになります。
実際には職種毎に細かくレベルについて記述されています。ちょっと気になるのは開発プロジェクトの規模とレベルが対応している点です。最近のアジャイル開発などでは様子が違うように思いますし、プログラマーのように1人で素晴らしいコードを書くタイプの技術者をどう評価すべきかという課題は残ります。
ただ独力で仕事ができるかどうか、会社や業界においてどのレベルに相当するかという考え方は能力評価に一定の枠組みを与えるのではないかと評価します。
スキルディクショナリは下図に示すように、スキル項目と知識項目を階層化し、職種と専門分野にどの項目が必要かを一覧形式で示したものです。
ITスキル標準の大きな特長は情報処理技術者試験と対応していることです。下表は情報処理技術者試験の出題範囲であるスキルと知識項目とスキルディクショナリの項目との関連を示しています。
図中、横軸の各技術者試験に応じて色分けがされている欄はその試験の出題範囲となる項目を示します。○印は専門領域ではないが広く習得が望ましい項目を表します。
ITスキル標準では、これらのスキルをどのように学べばよいかも「研修ロードマップ」を作成することにより提示しています。これは各職種毎にかなり詳細に定義されています。
以上が、ITスキル標準の概要です。本来は情報サービス企業がIT技術者の採用や育成に利用することを目的として作成されたものですが、個人のキャリアパスの検討やスキルアップにも利用することができます。ITスキル標準自体が定義しているように、ITスキル標準は実情に合わせて柔軟に変更できる「参照モデル」として位置づけられます。自分の興味のある職種や分野を考える参考として気軽に参照したらいかがでしょうか?
ITスキル標準の資料はIPAの下記のページで公開されています。
ITスキル標準(ITSS)と関連資料のダウンロード
ITスキル標準に関連して、2006年(その後2012年に改訂)に情報システムユーザースキル標準(UISS)、2008年に組み込みソフトウェア開発技術者を対象として「組込みスキル標準(ETSS Series)」が制定されています。詳細はIPAの下記ページを参照してください。
情報システムユーザースキル標準(UISS)と関連資料
組込みスキル標準(ETSS Series)
また2016年から第4次産業革命に向けて求められる新たな領域の“学び直し”の指針としてITSS+が、「データサイエンス領域」「アジャイル領域」「IoTソリューション領域」「セキュリティ領域」の4つの領域で策定されています。これも詳細はIPAの下記ページを参照してください。
ITSS+(プラス)
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